
「商業施設や公共施設、庭などに芝生の導入を検討している」
そんなときに決め手の一つとなるのが”天然芝のほうが環境に優しいから”といった理由です。
しかし、本当に天然芝は環境に優しいと断言できるのでしょうか?
一見エコに見える天然芝ですが、自然界では本来ありえないほど均一で青々とした状態を維持するために大量のエネルギーが使われているのが実情です。
この記事では、人工芝より天然芝のほうが環境に悪影響を与える理由を深堀りして解説していきます。
人工芝より天然芝のほうが環境負荷が大きい理由
ここからは、人工芝より天然芝のほうが環境負荷が大きい理由を解説していきます。
芝刈り時にCO₂を排出

天然芝は、美しい状態を保つために夏場は1週間ほどのサイクルで芝刈りが必要です。
自宅の庭であれば、ガソリンや電気を使わない手動式の芝刈り機で十分でしょう。
しかし、広い庭や施設ではガソリン式芝刈り機を使うことが多く、その際に大量の二酸化炭素(CO₂)や窒素酸化物(NOx)、微粒子状物質(PM2.5)などの排気ガスが発生します。
例えば、ガソリン式芝刈り機を1時間使用した場合は、自動車11台が1時間走行したのと同じ量の排気ガスが発生します。
| 天然芝 | あり |
|---|---|
| 人工芝 | なし ※芝刈りが不要 |
さらに大量に発生する刈り芝は、ゴミ収集車で運搬して焼却処分されますが、その過程でも燃料消費や焼却によりCO₂が発生します。
排気ガスは温暖化の原因となるだけでなく、大気汚染によって私たちの生活や健康に直接的な被害をもたらします。
水資源を大量に消費

天然芝は、綺麗な緑を保つためにこまめな水やりが必要不可欠です。
特に夏の猛暑が続く時期には大量の水を必要とし、ご家庭の庭でも水道料金が大きな負担になるほどです。
特に商業施設などの広い面積を天然芝にする場合は、その水使用量は膨大となり、貴重な水資源の浪費につながります。
例えば、天然芝の運動場を維持する場合は、年間約458万リットルが必要とされます。
日本人1人あたりの年間生活用水使用量が約8万リットルとすると実に約57人分に相当します。
| 天然芝 | あり |
|---|---|
| 人工芝 | なし ※水やりが不要 |
近年は記録的な猛暑と小雨により日本各地で水不足が発生しており、天然芝を維持するための散水がさらに大きな負担となります。
化学肥料による水質汚染

天然芝は、成長を促すために化学肥料を使うことがあります。
しかし、散布された化学肥料のすべてが芝に吸収されるわけではありません。
吸収されなかった成分は、雨水や散水によって地中に浸透し、やがて河川や地下水に流れ出してしまいます。
その結果、富栄養化を引き起こしてアオコなどの藻類が異常繁殖します。
藻類が増えすぎると水中の酸素が不足し、魚やエビなどの水生生物が大量死する原因となります。
| 天然芝 | あり |
|---|---|
| 人工芝 | なし ※化学肥料が不要 |
水質や土壌の変化は周囲の生態系全体にも波及します。
水草や昆虫の生息環境が失われ、鳥類や小動物の食物連鎖にも悪影響を及ぼし、地域全体の生物多様性を損なう恐れがあります。
殺虫剤・除草剤による健康リスク

天然芝は、害虫や雑草対策のために殺虫剤・除草剤が用いられることがあります。
しかし、これらの薬剤には人の健康に影響を及ぼすリスクが潜んでいます。
殺虫剤に含まれる成分は、長時間吸い込んだり皮膚に触れたりすることで頭痛や吐き気、めまいといった急性症状を引き起こす場合があります。
また、除草剤の中でも有名なラウンドアップ(グリホサート)は、神経系や全身の健康に影響を及ぼす可能性があるとして世界的にも議論の対象となっています。
特に小さな子どもやペットは体が小さいため、影響を受けやすく注意が必要です。
| 天然芝 | あり |
|---|---|
| 人工芝 | なし ※殺虫剤・除草剤は不要 |
薬剤の影響は使用者だけにとどまりません。
雨水と一緒に流れることで地下水や農業用水を汚染し、地域全体の健康や環境に影響を及ぼす恐れもあります。
天然芝の土壌でPFASが検出
アメリカの独立機関が学校の敷地にある天然芝の土壌を測定したところマサチューセッツ州環境保護局(MassDEP)の規制対象となる有機フッ素化合物「PFAS」が検出されました。
この原因としては、天然芝を維持するために用いられる除草剤や殺虫剤、防水処理剤などの一部にPFASが含まれていた可能性が考えられます。
PFASとは、永遠の化学物質と呼ばれるほど分解しにくい人工化学物質です。
そのため、一度体内に取り込まれると排出されにくく、体内に蓄積してしまいます。
近年の研究では、
- がん(腎臓がん・精巣がんなど)のリスク増加
- 免疫機能の低下やワクチン効果の減弱
- ホルモンバランスの乱れ(内分泌かく乱作用)
- 妊娠や発達への影響
などの可能性が指摘されており、健康リスクが指摘されます。
つまり、天然芝の管理に伴って土壌に残留したPFASは、環境汚染だけでなく人間の健康にも長期的な影響を及ぼす可能性があるのです。
現在の人工芝はPFASは添加されておらず、基本的に肥料や農薬、防水剤なども不要です。
そのため、天然芝のように管理過程でPFASが土壌に残留するリスクは低いとされています。
最後に
今回は、天然芝に潜む環境負荷について解説しました。
天然芝は自然素材である一方、その維持には多くの資源とエネルギーを必要とします。
そのため、天然=エコというイメージにとらわれず、維持管理やライフサイクル全体での環境影響を考えることが大切です。